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ユタ神様との出会いのお話

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奄美大島 17歳 1983年:夏

私は小さい頃から、突然起こる呼吸困難、激しい頭痛や腹痛に悩まされていた。
何度か病院で精密検査を受けたが、どこにも異常がない。
また、この時期に入ってからいろんな災いが立て続けに起こり、家に篭りがちになっていった。

それで、私の沖縄生まれのおばあさん登場、その名を「カメ」という。

カメ:もしかしたら何かの障りかもしれないから、ばあちゃんと一緒に神様の所に行って見てもらおうか。
私 :神様の所に行くって?
カメ:ユタ神様のことだよ。
私 :それって人間なの?
カメ:ユタ神はね、人間の体を持った生き神様なんだよ。
私 :そこで何するの?
カメ:病気の原因が何か聞いてお祓いしてもらうんだよ。

家族の健康や運勢などを見てもらったり、何かあればユタの所に相談に行っているらしい。

奄美には占い師という存在がいない。その代わりこの身近な”神様”がいる。

ついでに話しておこう。
奄美には葬儀屋さんはあるが、お寺はない。

あっ、神社はありますよ。古くからの小さな神社が多いです。昔の人は”ティラ”と呼んでいたそうですが、その外観や色は、本土のものとも沖縄のものとも違う独特な雰囲気です。

一番大きな神社は高千穂神社(宮崎県が総鎮守)です。
ユタと関りが深いみたいで、啓示を受けて宮崎まで参拝に行くユタもいます。
神社の祭りのパレードでは、ユタが先頭を歩いていくそうです。

カメ:島の人が長生きするのは、ユタ神の教えをいただき、自然の神々を大切に敬うからだよ。
私 :ふ~ん。

分かったような分からないような状態で、ばあちゃんに連れられてユタ神様のところに行くことにした。

場所はそう遠くないので歩いて行くことに。白い封筒にお礼金(気持ち)を入れて途中の酒屋でお酒を購入。

市内の中心部に大きな風呂屋があり、その裏にひっそりとユタの家があった。
玄関に注連縄が下げられている。それがユタの目印らしい。

カメ:こんにちは~神様ウガミ(拝み)に来ました! 今から大丈夫ですか?
(アポなしだ)

玄関を開けると、すぐに奥の正面にある神棚が目に入った。

ユタ:あっ、いらっしゃい、今お客さん帰ったところだからいいですよ、”いもりんしょ~れ”(お上がりください)。

お茶を出してくれたり、とても気さくで、人の良さそうな70代位の女性だった。この方が生き神様なんだ。緊張して思わず正座して背筋を伸ばした。

ユタ:あっ、足をくずされて下さい、あぐらでいいですよ。

そうはいかない、私は正座のままでついこう言ってしまった。

私 :正座のほうが落ち着くんです。

後で悔やむことになる・・・。

ユタ:ちょっと待ってね、風邪薬飲む時間だから。
私 :えっ! 神様も薬飲むのですか?

聞いてしまった・・・。

ユタ:人間の体の病気は医者が治すもの、神事(霊的な問題)は神様が治すものですよ。

いくら生き神様と言っても、元は人間の体、”超人”ではないんだ。

ユタ:それにね、ユタになる人はとても体の弱い人が多いのよ。「神がかり」と言って神様から試しを受けるから、たくさんの苦しみを与えられて”生きるか死ぬか”の瀬戸際を這い上がってユタになるの。

聖書の中でイエスが40日間1人で山に入りサタンの厳しい攻撃を受けるという、父なる神からの試しを受けた記述がある。機会があればまとめてみたいが、聖書との共通点がユタの伝承の中に多数見られる。

私 :どうして神様はそんなひどい事をするのですか?
ユタ:人間の100の苦しみを味わい、100の苦しみから救えるユタになりなさい、という事だと私は思っていますよ。

ユタになる人は、なりたくてなった人はほとんどいない。拒否して精神病院に入っている人もいるそうだ。逆に志願してもなれない”てるこてんざし”(太陽に差されるという意味。または太陽の神に使命されるということ)と言って、生まれる前から決まっている天命だそうだ。

ユタ:じゃそろそろ始めますか…。

普段着の大島紬の上に「白衣」をはおり、神棚の前に座り、こちらにお盆を渡すユタ。そのお盆の上に、カメおばあさんが、用意してきたお礼とお神酒を載せる。

カメ:よろしくお願いします。

神棚にロウソクと線香を立て、ドンドンと太鼓を叩きながら祝詞が始まる。トランス状態に入っていくユタ…。5分ぐらいの祝詞が終わり、ゆっくりと私達のほうに向き返る。

ユタ:見てもらいたい方の名前、干支、数え年をおっしゃってください。

トランス状態のユタは、さっきまで雑談していた様子とはまったく別人のように変貌し、背筋はシャキッと伸び、目は黒々と瞳孔が開き声の響きも違っている。

一人ずつの健康状態や気をつける事などを語るユタ。

私の叔父の話になった時…。

ユタ:あれ、この方はどっか悪いのですか? 病院に通う姿が映りますが…。
カメ:はい、今、県立病院に通っています。
ユタ:私のお腹が痛くなってきたから、お腹が悪いのですね。
カメ:はい、その通りです。
ユタ:でも大した事ないから大丈夫ですよ。この方は頭を抱えている姿が映るから神経からきているね。そしてこの方を悩ませているお子さんが一人いるね。
カメ:はい、長男のことです。
ユタ:甘やかしすぎだね、このままではいかんよ~。
(何も話してないのに、家の事情が分かるみたい)

神棚においてある鏡を見たり、コップに注いだお酒や線香を見たり、時には、目を閉じ神棚に話し掛け、首を縦に振ったり横に振ったりしながら淡々としゃべるユタ。

しばらくの間、私にも分からない家のことをカメばあさんと話していた…。

カメ:じゃ今度は、一緒にきた孫のこと見てもらえますか?

私をもっとユタの近くに行くように誘う…。

私 :よろしくお願いします。
ユタ:干支と数え年はなにね?
私 :丙午の数え18歳になります。(数え年は+1歳)

そう答えると、また太鼓を叩きながら祝詞を唱え始めるユタ。
私は神棚の前で、祝詞を聞きながら眼を閉じ手を合わせていると、頭がワッカのような物で締め付けられる感覚と、体が硬直して小刻みに震え始める。
何が起こっているのか、気が遠くなりそうになるのを堪える…。

ユタ:あんた今、頭締め付けられる感じしないかね。
私 :はい、頭がキリキリと痛みます。
ユタ:これは「神ざわり」だね~。
(カメばあさんの方を見て)
ユタ:こんくぁ、神生まれだりょっと(この子、神になる人として生まれていますよ)。
私 :えっ!
ユタ:私と同じように、神を拝むようになる人ですよ。
カメ:はげ~!! たまがり(とてもおどろいた)←驚いた時によく使う方言
(私の方を見て)
ユタ:あんたは、高神(タカガミ:高級神霊)ですよ。ユタのドンになる人、有名なユタになる人よ!

親指を突き出しながら興奮してしゃべるユタ。

ユタ:私の魂は、神様の腕から生まれたが、あんたは神様の眉間から生まれているねぇ~。どんなユタになるか楽しみだね~。私が生きている間に見られるといいが。

この頃は、聖書を信じていたから、なんて答えたらいいのか戸惑う私。

ユタ:だけど、今から「神がかり」が始まったら学校にもいけなくて大変なことになるから、「延期願い」しようね。
私 :「延期願い」ってなんですか?
ユタ:あなたの頭が痛いのやらは、「神ざわり」といって、神様が「あなたはユタになる人よ~」って、つつくからなのよ。
これから、色んなものが視えたり聞こえたりと神様が色んな事を教えてくれる「神知らせ」もキツくなってくるよ。

だからね、まだ年が若くこれから人として学校の勉強などもしていかなくっちゃならないから、「ちゃんと拝みますから、しばらく待ってください」という願いを神様に立てることを「延期願い」というのですよ。

私 :延期願いしたら私の体は良くなりますか?
ユタ:神様が聞き入れてくれれば、治まりますよ。
私 :そしたら、神様を拝まなくても大丈夫ですか?
ユタ:10年位は待ってもらえるが、時期が来たら親(ユタの師匠)を立てて、正式にユタにならないといかん。
私 :神様って、何の神様ですか?
ユタ:あなたを生かす全てのものですよ。山、川、海、太陽、月、たくさんの神様がいます。それと「あたい」というものがあって、ユタにはそれぞれ個人個人決められた神様がいます。それを見つけるのは自分しかできませんよ。その神様にたどり着いたとき「神の道」は開かれますよ。

私 :見つけられますか?
ユタ:いろんな「迷い神」や「悪神」もあなたを惑わしに来るでしょう。でも心の目でしっかりと見れば本物の神は分かります。だから手を合わせる神様を間違ったりすると、すぐに身体をやられるから、それは忘れないで下さいよ。

ユタ:なにか不思議な夢を見たり、他の人に視えないものが見えたりしてない?
私 :よく、白いひげの杖を持ったおじいさんが現れて、いろんな話を聞かせてくれます。
ユタ:それはあなたを指導する神だね~。あなたは本当にいいユタになるね。

延期願いとお祓いをしてもらい、その日から不思議と呼吸困難等は治まった。

しかし、足が痺れて感覚がなくなり、自分で自分の足を踏んだり、しばらくうなっていた。その姿を見て、カメばあさんとユタ神様も笑っていました。

(いいユタになれるかなぁ…。)

最後に

*この話は、初めてユタを知る人の為に判りやすい構成にしています。実際には4人のユタにお会いした時の話や印象を交ぜています。
また、1983年の記録ですので現代または未来の形式と変わっているかもしれません。

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